再婚という選択と、週末婚のはじまり

Married & Free

前回の「自由でいたい人”を好きになった日」では、再婚前の5年間、彼との出会いと心の揺れを綴りました。
今回はその続き――再婚という選択と、週末婚というかたちにたどり着くまでの物語です。

結婚か、別れか――小さな決断

「私と別れるか、結婚するか――どっちかにして」

一緒にいたい。ずっと彼のそばで、同じ時間を積み重ねていきたい。
私の中では、もう気持ちは固まっていたのに……。

それなのに、彼はなかなか「結婚」という言葉を口にしない。
どこかまだ、自由でいたいような、曖昧な距離を保とうとしているようで。

私は少しずつ苛立ちを感じていきました。
私はもう、決めていたのに。なのに、彼は――どうして?

気づけば、自分自身を追い込んでいました。

“このまま中途半端な関係を続けるくらいなら、もう別れよう”。

私の小さな決断。
その一言が、ふたりの未来を動かすきっかけになったのです。

どう暮らす?それぞれの事情と想い

結婚が決まり、最初に考えたのは「どう暮らしていくか」。

娘とは、これまで通り離れずに暮らしていきたい。
それは、5年間の付き合いの中で、彼も理解してくれていた想いでした。

私と娘は実家暮らし。学校までは車で10分。
私の職場も同じ方面にあり、今の暮らしがいちばん無理がない。
けれど、彼の家からは、学校も職場も1時間以上かかります。

それに彼は、ご両親と同居していて――
お父さんは長く体調を崩していて、お母さんは少し繊細で感情の波が読みにくいところがありました。
そんな日常の中で、彼はいつも穏やかに、その間に立って暮らしています。

「無理に関わらせたくないから」

そんなふうに、私や娘を守るようにそっと距離をとってくれていた彼のやさしさ。
自分のペースも、私たちの暮らしも、大きく変えることなく大切にしてくれようとしていたのだと思います。

だから、いっしょに暮らすという選択は、どうしても現実的ではありませんでした。

私と娘は今のまま実家で暮らして、週末だけ私が彼の家に通う。
そんな暮らし方が、私たちには一番自然に思えました。

でも、それをかたちにするためには、私の家族にも理解してもらわなければなりませんでした。

両親へ伝えた彼の想い

彼は、私の両親に向き合ってくれました。
「ご両親の介護のために結婚するわけではありません」
「ふたりの生活を壊さず、大切にしたいんです」

そんなふうに、まっすぐな気持ちを伝えてくれたのです。

そして、深く頭を下げて言いました。
「どうか、娘さんとお孫さんを、このままここに住まわせてあげてください」

その姿に少し驚きながらも、両親は静かにうなずいてくれました。
「娘と孫を無理に引き離すことはない」
そう思ってくれたようでした。

私たちの選んだかたちを、そっと受け入れてくれたこと。
あの時のぬくもりは、今でも心に残っています。

娘がくれた答え

──あのころ、まだ私たちが二人きりだった頃のこと。

離婚したとき、娘は幼稚園の年中でした。
卒園を前に、園から苗字の記載について聞かれました。

「呼び名は今まで通りでも、証書の記載は本当の苗字にできます」と。

娘に聞くと、
「本当の苗字で呼ばれたい」と。

小さな体で、娘はちゃんと考えて、自分で選んできた。
今でもその時の、まっすぐな瞳を思い出すことがあります。

高校卒業後は専門学校へ進学。 2年間の課程で、就職活動もすぐ始まる。

苗字が途中で変わることは避けたかった――
それは、私の勝手な想いかもしれません。
でもそれでも、苗字のことはとても大切な事でした。

だから、再婚のタイミングも、娘の卒業前に動きたかった。

だけど……そんな矢先、彼のお父さんの病状が悪化して。
「いまは結婚を延ばした方がいいかも」
そう私が言ったとき、彼は静かに答えました。

「もう長くないかもしれない父を安心させたい」

ご両親は、彼に交際相手がいることさえ知りませんでした。
私の存在に驚き、でも、喜んでもくれた。

だからこそ彼は、「結婚を延ばす」選択をしなかったのです。

再婚と週末婚、私たちらしい一歩

最初は私主導で進んでいたように思えた再婚話。
でも、最後の決断は、彼の言葉でした。

私が気にしていた娘の苗字のことも、 最終的には娘の意思で決めてもらいました。

「旧姓でもいいし、変えてもいい。どっちでもいいよ」
そう伝えると、娘はこう言いました。

「ママと一緒がいい。だから変える」

その言葉を彼に伝えると、彼は言いました。

「じゃあ、養子縁組をしよう」

私が守ってきた娘を、
これからは自分も一緒に守っていく。
その想いを、かたちにしてくれたのだと思います。

※養子縁組は、再婚した家族すべてが必ず行うものではありません。
私たちの場合は、娘自身の気持ちと、家族としての節目を大切にしたくて――
このかたちを選びました。

ああ、私、この人と出会って、
結婚したいと思って、
それを受け入れてもらって――
心の底からそう思えた、あの瞬間のぬくもりは、
今でも胸の奥で、ふわりと灯っています。

そんなハイブリッドな結婚生活の、私たちらしい“はじまりの一歩”。
「再婚」も、「週末婚」も、“ふつう”じゃなくていい――。
これが、私たちの選んだ愛のかたちです。

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